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最高裁判所第一小法廷 昭和24年(れ)1269号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人相沢登喜男上告趣意第一、二点について。

しかし、原判決は、被告人が小林貞夫なる当時十六年の少年が窃取して來た中古婦人用二六吋自転車一台の車輪二個(タイヤーチウブ附)及び「サドル」を取外しこれらを同人の持参した男子用自転車の車体に組替え取付けて男子用に変更せしめてこれを伊藤恒二郎に代金四千円にて賣却する斡旋をして賍物の牙保をしたものと認定判示したもので、要するに他人所有の婦人用自転車の車輪二個及び「サドル」を賍物と認めこれを牙保したものと判断したものであること明白である。そして、右原判決の事実認定は、その挙示の証拠により肯認することができる。且つその認定によれば判示のごとく組替え取付けて男子用に変更したからといって両者は原形のまま容易に分離し得ること明らかであるから、これを以て両者か分離することできない状態において附合したともいえないし、また、もとより所論のように婦人用自転車の車輪及び「サドル」を用いて小林貞夫の男子用自転車の車体に工作を加えたものともいうことはできない。されば中古婦人用自転車の所有者たる窃盗の被害者は、依然としてその車輪及び「サドル」に対する所有権を失うべき理由はなく、從って、その賍物性を有するものであること明白であるから、原判決には所論の違法は認められない。論旨はすべて採ることはできない。

よって旧刑訴四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)

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